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恋愛裁判

Love on Trial
2026 1.23Fri

世界の映画祭に続々正式出品決定 !

齊藤京子 倉悠貴 

仲村悠菜 小川未祐 今村美月 桜ひなの

唐田えりか 津田健次郎

企画・脚本・監督:深田晃司

共同脚本:三谷伸太朗 音楽:agehasprings

主題歌:「Dawn」yama  (Sony Music Labels Inc.)

製作:市川南 上田太地 共同製作:山口晋 玉井健二 渡辺章仁 エグゼクティブ・プロデューサー:山口晋 臼井央 プロデューサー:阿部瑶子 山野晃 共同プロデューサー:大野敦子(Survivance)
撮影:四宮秀俊 照明:後閑健太 美術:松崎宙人 長谷川功 録音:山本タカアキ ヘアメイク:稲月聖菜 スタイリスト:キクチハナカ 助監督:二宮崇 制作担当:最上勝司 ラインプロデューサー:戸山剛 キャスティングディレクター:杉山麻衣
撮影:四宮秀俊 照明:後閑健太 美術:松崎宙人 長谷川功 録音:山本タカアキ ヘアメイク:稲月聖菜 スタイリスト:キクチハナカ
助監督:二宮崇 制作担当:最上勝司 ラインプロデューサー:戸山剛 キャスティングディレクター:杉山麻衣
編集:シルヴィー・ラジェ VFX:近藤勇一 音響効果:佐々井宏太 音楽プロデューサー: 玉井健二 ミュージックスーパーバイザー:松宮聖也
製作:東宝 共同製作:ノックオンウッド agehasprings ローソン 制作プロダクション:ノックオンウッド TOHOスタジオ 配給:東宝 ⓒ2025「恋愛裁判」製作委員会
ハッピー☆ファンファーレ楽曲配信中
  • 「秒速ラヴァー」
  • 「君色ナミダ」
  • 「とおいひかり」
  • 本作品はHELLO! MOVIE方式による音声ガイド・日本語字幕に対応しています

Trailer動画

Introductionイントロダクション

カンヌ国際映画祭「カンヌプレミア」部門
正式出品深田晃司監督最新作 !

実際の裁判から生まれた気鋭の問題作が、
観る者の価値観を揺さぶり、前提を疑わせる

日本の現代社会においてアイドルは、時に大きな熱狂を生み出す存在でありながら、その裏側で人間らしい感情をルールで縛られる矛盾を抱えている。本作は、アイドルグループ「ハッピー☆ファンファーレ」のセンターを務める女性が「恋愛禁止ルール」を破ったことで裁判にかけられる物語を通じて、華やかな世界の裏側に潜む孤独や犠牲、そして自己を取り戻すための闘いを痛切なリアリティで描く。監督は国際的に評価される深田晃司。実際の裁判に着想を得て約10年を費やし、企画・脚本も手掛けた。主演は元・日向坂46の齊藤京子が映画初主演で、アイドルの内面的な葛藤をリアルに体現。深田監督は「齊藤さんとの出会いがなければこの映画は完成しなかった。絵空事でしかなかった脚本に全身全霊で血肉を与えてくれた齊藤さんに心から敬服しています」と絶賛。共演には倉悠貴、唐田えりか、津田健次郎ら実力派俳優陣が集結し、作品に深みを与える。

Storyストーリー

アイドルが「恋」をすることは「罪」なのか?

人気急上昇中のアイドルグループ「ハッピー☆ファンファーレ」でセンターを務める山岡真衣は、中学時代の同級生・間山敬と偶然再会し、恋に落ちる。アイドルとして背負う「恋愛禁止ルール」と、抑えきれない自身の感情との間で葛藤する真衣。しかし、ある事件をきっかけに、彼女は衝動的に敬のもとへと駆け寄る。その8カ月後、事態は一変。所属事務所から「恋愛禁止条項違反」で訴えられた真衣は、事務所社長の吉田光一、チーフマネージャーの矢吹早耶らによって、法廷で厳しく追及されることとなる。

Castsキャスト紹介

  • 齊藤京子Kyoko Saitou

    山岡真衣

    アイドルグループ「ハッピー☆ファンファーレ」のセンター。「恋愛禁止ルール」を破ったことで、所属事務所から訴えられる

    1997年9月5日生まれ、東京都出身。アイドルグループ日向坂46の元メンバー。卒業後は俳優として映画やドラマでの活躍の場を広げている。主な出演作に、映画『#真相をお話しします』(25/豊島圭介監督)、『(LOVE SONG)』(25/チャンプ・ウィーラチット・トンジラー監督)、『教場 Reunion/Requiem』(26/中江功監督)、ドラマ「泥濘の食卓」(23/EX)、「いきなり婚」(25/NTV)、「あやしいパートナー」(25/MBS)、「娘の命を奪ったヤツを殺すのは罪ですか?」(カンテレ・フジテレビ系)などがある。

  • 倉悠貴Yuki Kura

    間山敬

    偶然再会した真衣と恋に落ちる大道芸人

    1999年12月19日生まれ、大阪府出身。2022年『夏、至るころ』で映画初出演ながら主演を務め、21年連続テレビ小説「おちょやん」で朝ドラ初出演を果たす。主な出演作に、映画『市子』(23/戸田彬弘監督)、『六人の嘘つきな大学生』(24/佐藤祐市監督)、『隣のステラ』(25/松本花奈監督)、『教場 Reunion/Requiem』(26/中江功監督)、ドラマ「SHOGUN 将軍」(24/Disney+)、「ガンニバル シーズン2」(25/Disney+)などがある。

  • 唐田えりかErika Karata

    矢吹早耶

    「ハッピー☆ファンファーレ」のチーフマネージャー

    1997年9月19日生まれ、千葉県出身。2018年、濱口竜介監督作『寝ても覚めても』で映画初主演を飾り、山路ふみ子映画賞で新人女優賞、ヨコハマ映画祭で最優秀新人賞を受賞。日韓両国で活動し、近年の主な出演作に『朝がくるとむなしくなる』(23/石橋夕帆監督)、『ナミビアの砂漠』(24/山中瑤子監督)、『死に損なった男』(25/田中征爾)『Page30』(25/堤幸彦監督)、『海辺へ行く道』(25/横浜聡子)ドラマ『極悪女王』(24/Netflixシリーズ)などがある。

  • 津田健次郎Kenjiro Tuda

    吉田

    「ハッピー☆ファンファーレ」所属事務所の社長

    1971年6月11日生まれ、大阪府出身。声優業、俳優業を中心に、映像監督や作品プロデュースなど幅広く活躍。声優としての主な出演作は、「呪術廻戦」の七海建人役、「ラーメン赤猫」の文蔵役、「ゴールデンカムイ」の尾形百之助役、『ONE PIECE FILM RED』のゴードン役など数多くのヒット作がある。2020年には第15回声優アワード主演男優賞受賞。24年には第53回ベストドレッサー賞芸能部門を受賞。俳優としての近年の主な出演作に、NHK連続テレビ小説『あんぱん』、日曜劇場『ザ・ロイヤルファミリー』、大河ドラマ『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』、映画『かくかくしかじか』(25/関和亮監督)、映画『沈黙の艦隊 北極海大海戦』(25/吉野耕平監督)などがある。

  • 仲村悠菜Yuna Nakamura

    清水菜々香

    「ハッピー☆ファンファーレ」のメンバー。グループ最年少でメンバーカラーは黄色

    2007年5月29日生まれ、福岡県出身。アイドルグループ私立恵比寿中学の現役メンバーとして活動する一方で、俳優としても活動している。主な出演作に、映画『仮面病棟』(20/木村ひさし監督)、ドラマ「浦安鉄筋家族」(20/TX)、「ラブライブ!スクールアイドルミュージカル the DRAMA」(24/MBS)などがある。

  • 小川未祐Miyu Ogawa

    大谷梨紗

    「ハッピー☆ファンファーレ」のメンバー。メンバーカラーは青

    2001年3月25日生まれ、東京都出身。2018年に主演映画『最期の星』(小川紗良監督)でデビュー。主な出演作に映画『よこがお』(19/深田晃司監督)、『海辺の金魚』(21/小川紗良監督)、テレビ東京「痛ぶる恋の、ようなもの」(24)、『とりつくしま』(24/東かおり監督)などがある他、音楽家として25年に2ndアルバム『Tulsi』をリリース。

  • 今村美月Mitsuki Imamura

    三浦美波

    「ハッピー☆ファンファーレ」のメンバーでリーダーを務める。メンバーカラーは緑

    2000年2月19日生まれ、広島県出身。アイドルグループSTU48の元メンバー。卒業後、映像作品や舞台などで表現の幅を広げている。

  • 桜ひなのHinano Sakura

    辻元姫奈

    「ハッピー☆ファンファーレ」のメンバー。メンバーカラーはピンク

    2004年5月6日生まれ、岩手県出身。アイドルグループいぎなり東北産の現役メンバー。映像作品への出演は今回が初となる。

Staffスタッフ紹介

  • 監督:深田晃司

    2010年『歓待』が東京国際映画祭「日本映画・ある視点」作品賞、11年プチョン国際ファンタスティック映画祭最優秀アジア映画賞受賞。13年『ほとりの朔子』が、ナント三大陸映画祭グランプリ&「若い審査員賞」をW受賞。16年『淵に立つ』がカンヌ映画祭「ある視点」部門審査員賞、17年芸術選奨文部科学大臣新人賞受賞。18年仏芸術文化勲章「シュバリエ」受勲。その他の監督作に、『さようなら』(15)、『よこがお』(19)、『本気のしるし〈TVドラマ再編集劇場版〉』(20)、『LOVE LIFE』(22)、制作中の新作に『ナギダイアリー(仮)』などがある。

  • 脚本:三谷伸太朗

    脚本を務めた映画・ドラマ『本気のしるし』(19~20/深田晃司監督)が第73回カンヌ国際映画祭「Official Selection 2020」に選出され、日本民間放送連盟賞番組部門「テレビドラマ番組」で優秀賞受賞、第3回アジア・コンテンツ・アワードで脚本賞にノミネートされた。その他の作品に、映画『夏の夜空と秋の夕日と冬の朝と春の風』(19/向井宗敏監督)、ドラマ「アイドル失格」(23/BS松竹東急CX系列)、「怖れ」(24/CBC)、舞台「あにてれ×=LOVE ステージプロジェクト「ガールフレンド(仮)」などがある。

  • 音楽:agehasprings

    総合音楽・文化プロデュースを事業領域とし、数々のヒットを生み出し続けるクリエイティブカンパニー。日本を代表する音楽ヒットメーカーが多数在籍し、YUKI、ゆず、Superfly、中島美嘉、JUJU、back number、米津玄師、いきものがかり、エレファントカシマシ、ポルノグラフィティ、Official髭男dism、あいみょん、Aimer、菅田将暉、幾田りら、緑黄色社会など、第一線で活躍するアーティストや国内外の大ヒット音楽を数多く手がける。これまでに手がけた作品のパッケージ総売上枚数は1億5,000万枚を超え、YouTubeでの総再生回数は200億回以上。

  • 撮影:四宮秀俊

    2001年、大学在学中に映画美学校フィクション・コース第6期初等科に入学。高等科修了後、撮影助手として映画やMVなどの撮影に参加。のちカメラマンとなる。主な映画作に、『Playback』(12/三宅唱監督)、『ミスミソウ』(18/内藤瑛亮監督)、『宮本から君へ』(19/真利子哲也監督)、『ドライブ・マイ・カー』(20/濱口竜介監督)、『違国日記』(24/瀬田なつき監督)、『敵』(25/吉田大八監督)、『ファーストキス1ST KISS』(25/塚原あゆ子監督)などがある。18年には三宅唱監督作『きみの鳥はうたえる』で第73回毎日映画コンクール撮影賞を受賞している。

  • 照明:後閑健太

    東京芸術大学大学院映像研究科を卒業後、主に映画製作の現場に照明助手として従事。
    照明助手として従事したのち、19年から照明技師としての活動を主軸に映像制作に関わる。
    主な映画作に、『泣く子はいねぇが』(20/佐藤快磨監督)、『あのこは貴族』(21/岨手由貴子監督)、『マッチング』(24/内田英治監督)、『水深ゼロメートルから』(24/山下敦弘監督)、『ショウタイムセブン』(25/渡辺一貴監督)、『近畿地方のある場所について』(25/白石晃士監督)、『海辺へ行く道』(25/横浜聡子監督)、『君の顔では泣けない』(25/坂下雄一郎監督)などがある。

  • 録音:山本タカアキ

    録音技師やサウンドデザイナーとして数々の作品に携わる。主な映画作に、『風の電話』(20/諏訪敦彦監督)、『音楽』(20/岩井澤健治監督)、『Arc』(21/石川慶監督)、『窓辺にて』(22/今泉力哉監督)、『さかなのこ』(22/沖田修一監督)、『白鍵と黒鍵の間に』(23/冨永昌敬監督)、『ネムルバカ』(25/阪元裕吾監督)、『夏の砂の上』(25/玉田真也監督)などがある。

Theme song主題歌情報

  • 主題歌:yama「Dawn」
    (Sony Music Labels Inc.)

    SNS発のソロ・シンガー。
    2020年4月にオリジナル楽曲「春を告げる」で鮮烈なデビューを飾り、TVアニメ「SPY×FAMILY」のED主題歌「色彩」や、TVアニメ「機動戦士ガンダム 水星の魔女」のOP主題歌「slash」など多くのヒット曲を抱える。

    2026年1月21日(水)配信リリース

    配信はこちらLINK

コメント

自分が選んだことを後悔しないと誓っても、人は欲望や期待に目が眩んで自分を見失ってしまうこともある。そして、次第に理想の自分から離れていくことへの葛藤と足掻きが生まれる。それもまた人間らしさであるともいえるのかもしれない。夢とアイデンティティの狭間で揺れ動きつつ、理想とは違う自分だったとしても、その弱点すらもいつか愛せるように、許せるように。そう願いを込めて歌っています。
主題歌「Dawn」、映画とともにお楽しみいただければ幸いです。

Interviewインタビュー

  • 深田晃司監督インタビューLINK
  • 齊藤京子インタビューLINK
  • 深田晃司監督インタビュー

    今回の映画は、過去に深田監督が読まれた新聞記事からインスパイアされて作られたそうですね。

    2015年の終わり頃に偶然読んだネット上の記事で、女性アイドルがファンの男性と恋愛したことで所属事務所から損害賠償を請求された事件を知ったんです。損害請求の根拠になったのは、アイドルの女性と事務所との間で交わしていた「恋愛禁止」に相当する内容の契約書だった。業界内に、アイドルは恋愛をしてはいけない、という暗黙のルールがあることは当然知っていましたが、それが契約書に書かれ裁判にまで発展したという事実に驚き、これを題材に映画を作りたいと考えたのがそもそもの始まりです。
    当時『淵に立つ』を一緒に作っていたプロデューサーの戸山剛さんにざっくりとアイディアを話したところ、すぐにやりたいと乗ってくれて脚本開発が始まりました。実は戸山さんは大のアイドルファンで、さらに共同脚本の三谷伸太朗さんもアイドルグループの舞台やライブの作家をしているくらいアイドルに詳しい人だった。彼らの力を借りつつ、ひたすら取材をして業界について学んでいきました。

    発案から映画が完成するまでの約10年間、最初のアイディアから考えが変わっていった部分もあったんでしょうか。

    最初に思ったのは、え、これって人権問題じゃないのかな、という素朴な疑問でした。そこから出発して、ファンとの間に結ばれる疑似恋愛的な関係を煽りビジネスに結び付けていく企業の姿勢や、アイドル業界における搾取構造や人権問題を糾弾する思いが当初は強かったと思います。ただ、脚本を書くために調査を進めるうちに、この映画を見てほしい層はどこかと考えるようになりました。
    たとえばヨーロッパの多くの人にとっては組織が個人の感情や恋愛を制限するなんてありえないと感じるでしょうし、日本のアイドル文化はときには児童への性搾取のような文脈で深刻な社会問題として捉えられていることを思えば、それらをバッサリと断罪すれば、海外の観客には受け入れやすいだろうなと想像できました。でもこの映画を本当に見てもらいたいのは誰だろうと考えていくと、必ずしもヨーロッパやアメリカの観客ばかりではなかった。実際のアイドルファンの人たちであり、今現在活動しているアイドルの人たちや、これからアイドルを目指そうとしている子たちに見てほしい。やっぱり、小さな頃から当たり前のようにアイドル文化に触れてきた日本や韓国、アジア諸国とヨーロッパでは、問題点への認識も含め、アイドル文化に対する解像度や寄り添い方にはだいぶ差が出てきます。どういった視点で描いたとしても正解不正解はありませんが、日本映画だからこそ作れるアイドル業界の捉え方があるだろうと思いました。それなら業界全体を上から目線で一括りに断罪したり、欧米社会に生け贄を差し出すようにスキャンダラスな描き方をするのは違うのではないか。脚本開発を進めるうちに段々とそう考えるようになりました。
    実際にアイドルとして活動している方や、すでに卒業された方に話を聞くと、この仕事を目指すきっかけは、歌やダンスが好きだったり、俳優を目指していたり、先行のアイドルに憧れていたりと本当に色々で、そういった中で恋愛禁止はこの業界にある象徴的ではあるものの一つの特徴でしかない。そうしたいろんな思いを抱いてアイドルとして生きている人たちやファンダムの存在を、業界が抱えるワンイシューで「アイドル業界=悪」と単純化して描いたり、それこそ犬笛を吹くような映画にはならないようにしたいと思いました。時間をかけて取材をしていくなかで徐々に脚本の方向性も変わっていきました。

    映画を見ると、事務所の人間とアイドルとの関係のなかにも微妙な親密さがあったりして、一方的に搾取する側とされる側がいるような単純な構造ではないなと感じました。

    アイドル業界ってひどいよね、恋愛禁止って人権問題だよね、という側面だけを描くならもっとわかりやすい話にできたと思いますが、現実を知れば知るほど、そう単純には描けないなと実感していきました。もちろん、映画よりももっとひどい状態の事務所は現実にありますし、プロデューサーからアイドルへの性加害も実際に起きています。だけど酷い現実にばかりフォーカスしすぎると、個々のスキャンダル性ばかりが浮かび上がり構造の問題に意識がいきづらくなる。事務所をどこまで「悪」として描くべきかはプロデューサー陣ともずいぶん話しあいましたが、最終的には、事務所側にも良心的な人間はいる、でも結局は個人の思いを超えてシステムに絡めとられていく、というように、構造的な問題を複雑なレイヤーをもって描こうと、方向性が決まっていきました。

    具体的に脚本上で大きく変わった部分はありますか?

    最初の発想では、映画の冒頭から裁判と真衣と敬との恋愛とが同時並行で進んでいき、裁判の終わりと共に恋愛も終わる話だったんです。それこそ『ブルーバレンタイン』のような構成を考えていて。それと、こっちの方が変更点としては重要ですが、実は最初の案ではもっとショッキングな悲劇が起きる予定でした。でもそれでは今アイドルを目指すこと、アイドルの世界に対し作品があまりにネガティブなイメージを与えてしまうのではないか、アイドルという生き方自体を否定しているよう見えてしまうのでは、と思い始め、真衣と梨紗、菜々香が三者三様の選択をする今の結末に変わりました。

    この映画では、自身もアイドルとしての経験をもつ齊藤京子さんの存在がとても大きかったと思います。齊藤さんの起用の経緯を教えてください。

    当初から、真衣はアイドルの方に演じてもらうのがベターだろうと思っていました。表情の作り方から視線まで、実際にアイドルとして活動する方にしか出せないリアリティがあると思ったので。なので、俳優にもアイドルにもオーディションの案内を送っていたのですが、アイドル関係の事務所の多くからすぐに断られてしまいました。アイドル業界に対して問題提起を含むような内容ですから、当然ではありますよね。諦めかけていたころ、2024年の春に偶然、元日向坂46の齊藤京子さんが東宝芸能に所属したというネットニュースを目にし、そこで見た齊藤さんの宣材写真が真衣のイメージにぴったりでした。しかも東宝芸能ということは映画に前向きなはず、と勝手に思い彼女にオーディションの声がけができないだろうかと提案してみたら、アイドルとしての齊藤さんを現役時代からよく知っていた戸山プロデューサーが「彼女が出るなら絶対この映画は成功する!」と大興奮して(笑)。事務所に連絡したら、齊藤さんはすぐに脚本を読んで、オーディションを受けたいとおっしゃってくれました。戸山さんは今回は現場プロデューサーの立場でキャスティングに決定権があるわけではないので、まずはオーディションということで、俳優も含めた多くの方が参加する中に齊藤さんもその一人として参加してもらいました。
    オーディションで齊藤さんの芝居の持ち味がより生きていたのは、裁判のシーンでした。淡々と感情を抑えて独白するような芝居が素晴らしく、決め手になりました。実は当初の脚本では、裁判で真衣がファンとアイドルとの関係について長く語る場面があったんですが、齊藤さんに決まった後、すべてカットしました。トップアイドルとして長年ファンとの関係を培ってきた歴史を持つ齊藤さんがそこにいれば、セリフでアイドルとは何かを説明しなくても十分伝わるだろうと思ったので。

    ハッピー☆ファンファーレのメンバーたちは、互いを助け合う仲間であり、ライバルでもあります。女性たちの関係を描くうえで、気をつけたり意識したりしたことはありましたか?

    これだけはやってはいけないと決めていたのは、いわゆる「女性の敵は女性」の構図を安易に作ることでした。もちろん真衣と菜々香がぶつかりあったり、マネージャーの早耶の存在もありますが、そこに過度にフォーカスをしない。それが一番気をつけていたところです。

    ハッピー☆ファンファーレのライブの描写や、ファンとの交流の描き方のディテールは、どのように作り上げていったんでしょうか。

    今回幸運だったのが、4名の助監督のうち若い女性の2名が大のアイドルファンだったことです。小道具ひとつのディテールからちょっとしたファンの描写にまで細かいリアリティチェックが入り、とても助かりました。たとえば劇中で登場するハッピー☆ファンファーレのグッズやフライヤーのデザイン、ライブでのファンの掛け声も、彼女たちのアイディアで細かく作っていくことができました。

    映画は二部構成ですが、後半の裁判劇では、裁判の勝敗ではなく真衣たちが和解に応じるかどうかが物語の中心になっていきます。和解をめぐる葛藤というテーマはどのように生まれてきたのでしょうか?

    アメリカの法廷映画のような、勝つか負けるかで明確なカタルシスをもたらす話にならないだろうことは当初から覚悟していました。そもそも日本の民事裁判では、当事者が出廷しないことも多く、一体何と戦っているんだろうという感覚の方がよりリアルだと思います。自分は、最近はハラスメントをめぐる問題についても話を聞いたり関わる機会が多いんですが、精神的な被害が絡む問題において「和解」はとてもハードルが高い。たとえ和解をできたとしても、当事者にとっては、いろんな葛藤や悔しさを抱えたまま選んだ苦渋の選択であることがほとんどです。心や倫理の問題になると、法制度の限界みたいなものがどうしてもつきまとう。そういう側面にもフォーカスしたつもりです。

    敬がパントマイムアーティストであるというユニークな設定はどのように生まれたんでしょうか?

    全部が全部ではないにせよ、日本の多くのアイドルにありがちな傾向として、彼女たちに十分な主体性が与えられていないという点があると思います。曲もダンスも活動方針も、グループの名前でさえ事務所から与えられていることが多く、自分たちの意思で何かを決める機会が極端に少ない。それとアイドルビジネスでは、アイドルに対するファンのリスペクトをどうお金に変えていくかが複雑にシステム化されています。アイドルと話したり握手をしたりするのにもCDを何枚も買う必要があったりとか。一方パントマイムアーティストは、どういう芸をするかはすべて自分が決定し、お客さんの前で芸をしてその場で投げ銭をもらうという仕組みも極めてシンプルです。同じ芸能の仕事でありながら両者は対照的で、だからこそ真衣が自分の仕事を見つめるきっかけとなり、また憧れていく構図がわかりやすいかなと思いました。 そうした理屈とは別に、映画に出てくる大道芸人っていいよね、という単純な思いもありました。フェデリコ・フェリーニの『道』やピエール・エテックスの『ヨーヨー』、レオス・カラックスの『ポンヌフの恋人』にも、大道芸が印象的に出てきますよね。

    『本気のしるし』や『LOVE LIFE』に続き、本作も恋愛が大きなテーマのひとつになっています。深田さんにとって、恋愛を描くことの面白さとは何でしょうか?

    恋愛がもつ残酷さが好きなんです。10代で高野文子さんの漫画『黄色い本』を読んだときに強烈に好きだったセリフがあって、「誰かを選ぶということは誰かを選ばないということだ」という言葉です。あらゆる人間関係がある種の残酷さを持っていることを見事に表した言葉で、その残酷さがもっとも強烈に現れるのが結婚であり恋愛であると思っていて。それが、自分が恋愛に惹かれる理由なんだと思います。
    もうひとつ、敬愛する作家の富岡多恵子さんのエッセイで、恋だの愛だの誤魔化すな、結局は発情なんだ、ということが書かれていて、それにもがつんと影響を受けました。ご飯を食べたいとか寝たいといった人間にとって当たり前ともいえる生理現象を、ひとつの業界が抑圧し自由を制限する、その奇妙さを描くのが今回の狙いの一つではありました。

    ラストシーンは夜明けの海を舞台にした美しい場面ですが、やはりロメールの『緑の光線』へのオマージュなんでしょうか?

    『緑の光線』は大好きな映画ですが、とてもあんな名作と比べるわけにはいきません(笑)。とはいえちょっとだけ意識はしていました。あっちは夕日でこっちは朝日ですが。実は撮影当日は曇っていて本物の「だるま朝日」は撮れなくて、後日、夕方に撮った「だるま夕日」を逆再生で使っています。編集でやってみたら意外とちゃんとだるま朝日に見えて驚きました。こういう魔法みたいなことができるのが、映画の面白いところですよね。

  • 齊藤京子インタビュー

    最初に『恋愛裁判』の脚本を読んだ印象を教えてください。

    ちょうど日向坂46を卒業して一、二ヶ月後くらいの時期に脚本を読み、衝撃を受けました。最初から最後までリアリティのある描写ばかりで、これほどアイドル活動をよく理解して書かれた脚本を初めて読みました。自分が演じることを抜きにして、物語として本当におもしろかったです。

    具体的にどのあたりにリアリティを感じたんでしょうか?

    前半のアイドル活動についての描かれ方ですね。イベントやプロモーションミーティングの様子など、裏側の仕事も丁寧に描写されていて驚きました。イヤモニやオーバーチュア(ステージに上がる時に流れる曲)といった業界ではいつも聞いていた用語がたくさん出てきたり、ディテールまでとても正確でリアルだなと思いました。

    役作りをするうえで、日向坂46での活動が大きく反映されたと思われますか?

    そうですね。特に前半部分については、私が普通に過ごしてきた時間がそのまま役作りになっていたかのようでした。もちろん映画初主演ということでプレッシャーはありましたが、アイドルパートにおいては、これまで自分が実際にやってきたお仕事を今度はお芝居でやってみた、という感覚でした。

    深田監督とは色々なお話をされたかと思いますが、具体的にどのようなお話をされたか、印象に残っていることはありますか?

    深田監督とは、真衣という役に関してはもちろん、物語のことやアイドルとしてのディテールなど、入念にお話ししました。実は、最初に脚本を読ませてもらったときは、グループ内での真衣のポジションがセンターではなく、いつも端っこにいるという設定でした。それを読んで少し意外に感じたんですね。ちょっと影がある部分も含めて、私には真衣はいちばんセンターに合いそうな子だなと感じられたので、監督には正直にそうお話ししました。監督の中でも考えが変わっていったのか、次の脚本では、センターのポジションに変更されていました。
    他にも、ライブ前にはどのタイミングでイヤモニをつけるのが普通かとか、ちょっとした描写についてもその都度監督と話して映画に反映していただきました。それと、現場ではハッピー☆ファンファーレのメンバー役のみんなとも意見交換をよくしていました。現役のアイドルや経験者が多かったので、「こういうときって普通はこうしましたよね?」とそれぞれの経験から意見を言い合って。なので、できあがった映画を見たときは、フィクションの映画を見ているというより、実際のアイドル活動のドキュメンタリーを見ているような感覚でした。

    ハッピー☆ファンファーレのメンバーを演じたみなさんとの共演はいかがでしたか?

    私はグループ活動をしていた当時は、あまりまわりと群れないタイプと言われていたので、役の上でとはいえ、アイドルグループとして他のメンバーを演じる子たちとどう接したらいいんだろうと、最初は不安でした。でも撮影が始まったら、自分でもびっくりするくらい仲良くなりました。撮影の合間にみんなでゲームをしたり、撮影がない日はマネージャー役の唐田さんも入れたグループライン上で交流したり。映画の撮影をしているのか、ハッピー☆ファンファーレというグループでアイドル活動をしているのか、境目がわからなくなるくらい楽しく過ごしました。他のメンバーを演じた子たちが先にクランクアップをするときには、まるで彼女たちが先に卒業してしまうように感じて大泣きしてしまいました。

    深田監督の映画では、撮影に入る前に、本読みやリハーサルを入念に行うそうですね。

    本読みもリハーサルもかなり時間をかけて行いました。本読みから徐々に立ち稽古になっていって、ピックアップされたシーンを何度もくりかえし練習しました。あとはライブ場面のためのレッスンや振り入れも入念にしていたので、普通の撮影日数くらいの準備期間があった気がします。

    本読みやリハーサルでは、深田監督からはどのような演出をされたんでしょうか。

    キャラクターを作っていくうえで細かい演出をしていただきました。「もう少しテンションが低くてもいいかも」とか「ここは独り言っぽい感じがいいかな」と細かく言ってくださって、それを踏まえてもう一度お芝居をしては確認し合う。そうした過程を何度もくりかえして、一緒に役を作っていきました。

    深田さんから言われて特に印象に残ったことはありましたか?

    「私は人がぼそぼそ話す感じが好きなんです」とおっしゃっていたのをよく覚えています。たしかに、監督の他の作品を見ても、俳優さんたちが普段の生活のように自然に話すのが素敵だなと感じます。真衣を演じるには、アイドルなのでもう少し声のトーンをあげたほうがいいかなと最初は思ったんですが、低くぼそぼそ話す感じのほうがよりリアルでいいということで、そのままになりました。
    ハッとさせられたと同時にとても難しかったのは、セリフを言うときの息継ぎについての指摘です。お芝居をしていると、「次に長いセリフが来るから、ここで息継ぎをしておこう」とつい先に備えてしまうんですね。自分ではまったく無意識にしていたことなんですが、監督から「普通なら、このあと自分がどれくらい長く話すかなんてわからないまま話しますよね」と言われて、そうか、これって芝居だからしていた息継ぎなんだなと初めて気づきました。セリフを意識しないように話すのは難しかったですが、芝居で話すってこうなんだな、普段話すときはこういうふうなんだな、と知ることができて、お芝居をするのがぐっと楽しくなりました。

    具体的に、演じる上で難しかったり苦労したりしたシーンはありましたか?

    裁判のシーンはすごく緊張しました。全体的にほぼ順撮りだったんですが、後半の裁判シーンの撮影に入ったとたん、共演者の人たちの顔ぶれも一変し、まったく別の映画の撮影に入ったと思うくらい現場の雰囲気ががらっと変わって、一気に緊張しました。
    そこで真衣が話すセリフがまたリアルだったんです。私は、中学生の頃にアイドルに憧れてオーディションをたくさん受けたものの毎回落ちてばかりで。これで最後にしようと受けた日向坂46のオーディションで初めて合格したのですが、まさにそれと同じことが真衣の経験として脚本に書かれていて、初めて読んだときは監督がどこかで私の経験を聞いて書いてくれたんだろうかと思ったくらいです。だからこのセリフを裁判所のセットで話すとなったときは、真衣の人生と実人生が完全に重なり合うような感覚に陥りました。まるで自分自身が真山敬と恋愛をしてグループをやめて今この裁判に来ているような錯覚に襲われて、他の場面以上の緊張を味わいました。

    真衣がアイドル活動をする前半から、グループを脱退する後半に移り、真衣の顔つきが段々と変わっていくのもリアルでした。

    最初は舞台の上でキラキラ輝いていた真衣が、グループを脱退してしばらく経ち、久々にレッスン場で踊る場面は、お気に入りの場面です。脚本のト書きでは「ふと鏡を見ると、かつてとは明らかに違う疲れ切った顔の真衣がいる」と書かれていたので、 メイクさんたちとも相談し、ぐったりと疲れた顔を作っていきました。化粧はほとんどしないで、クマを足したり、いつもは撮影前にしていただくリフトマッサージもしませんでした。おかげで前半の真衣とはまったく別の顔を見せられたかなと思います。その後、やってきた子供たちから「ハピファンの真衣ちゃんですか?」と聞かれて思わず否定してしまうところでは、自分でも思わず泣けてきてしまいました。

    出来上がった映画を見て、特に印象に残った場面や、いちばん好きだなという場面はありましたか?

    弁護士との打ち合わせで事務所を買収した相手から和解を求められた後、突然「甥っ子がファンなので写真を撮ってもらえませんか」とお願いされる場面が、自分で見ていてもすごく面白かったです。カンヌでの上映でも爆笑が起きて嬉しかったです。相手の態度がころっと変わるところや、真衣がどうしたらいいか戸惑ってる感じも、妙にリアルなんですよね。

Production Notesプロダクションノート

  • 01.企画の成り立ちLINK
  • 02.キャスティングLINK
  • 03.本読みとリハーサルLINK
  • 04.いつも以上に時間をかけた撮影前の準備LINK
  • 05.クランクインLINK
  • 06.リアリティを目指したライブシーンLINK
  • 07.大道芸LINK
  • 08.裁判シーンLINK
  • 09.大変だった撮影LINK
  • 10.クランクアップLINK
  • 01.企画の成り立ち

    『恋愛裁判』の企画が立ち上がったのは2016年。きっかけは、監督の深田晃司が「元アイドルの女性が、異性との交際を契約違反とされ、裁判で賠償を命じられた」という記事を読み、日本のアイドル文化と恋愛禁止のルールをめぐる問題をテーマにした映画をつくりたいと考えたこと。題材の性質上、簡単には製作が進まず、深田監督は『海を駆ける』(2016)、『よこがお』(2019)、『本気のしるし』(2019)、『本気のしるし 劇場版』(2020)、『LOVE LIFE』(2022)など、次々に新作を発表しながら、『恋愛裁判』の構想を練っていった。

    必ずしもアイドル文化に精通していたわけではないという深田の心強い協働者となったのは、実際に構成作家としてアイドルグループのライブやイベントの仕事を手がけてきた三谷伸太朗。時間をかけ三谷と共に脚本を練っていくのと並行し、深田はさまざまなアイドルグループのライブにも足を運び、現役アイドルや元アイドルたちはもちろん、アイドル業界で働く人たちへの取材を行なっていった。何度も脚本を練り直し、ストーリーや設定も少しずつ変化を遂げていくなか、ついに脚本が完成。コロナ禍を経て、撮影に向けての準備が本格的にスタートした。

  • 02.キャスティング

    キャスティングは基本的にすべてオーディションで行われた。何より重要だったのは主人公・真衣の配役。実際にアイドル活動を経験してきた人をキャスティングし、役にリアリティを持たせたいという監督たちの願いのもと、俳優に限定せずアイドルも所属するいくつもの事務所にオーディションの案内を送るが、アイドルが恋愛しその罪を裁判で問われるという内容もありキャスティングは難航した。そして2024年、元日向坂46の齊藤京子が東宝芸能に所属した、というネットニュースに掲載された彼女の宣伝写真に直感的な何かを感じた深田は、すぐさま彼女の事務所にオーディションへの参加を働きかける。オーディションに参加した齊藤の演技に確信を得た深田は、齊藤京子を主演に抜擢したのだった。

    真衣の中学時代の同級生で、大道芸人の敬を演じるのは、『市子』、『SHOGUN 将軍』(Disney+)など多くの話題作に出演する倉悠貴。真衣が所属する事務所のチーフマネージャー・矢吹早耶役には唐田えりか、そして事務所の社長役・吉田光一を津田健次郎が演じる。

    真衣が活動するアイドルグループ「ハッピー☆ファンファーレ」のメンバーのキャスティングも重要だった。劇中では歌やダンスを披露する場面が多いため、オーディションでは、芝居を中心に見ながら、歌やダンスの経験も重視された。そして選ばれたメンバーは4名。グループ最年少の清水菜々香を演じるのは、アイドルグループ私立恵比寿中学の現役メンバーである仲村悠菜。メンバーの中でもっともクールで大人びた大谷梨紗役は、『よこがお』から約6年ぶりの深田組参加となる小川未祐。グループ最年長でリーダーの三浦美波役には、アイドルグループ元・STU48の今村美月。辻元姫奈を演じるのは、東北地方出身女性アイドルグループ・いぎなり東北産の桜ひなの。5人のメンバー中、齊藤を含む4人がアイドル活動の経験者であり、唯一の未経験者である小川も、俳優業を始める前はガールズグループ練習生としての活動経験もあり、ハッピー☆ファンファーレにはぴったりな配役だった。

  • 03.本読みとリハーサル

    キャストが決定し、いよいよ撮影の準備がスタートする。俳優の芝居作りを重視し、本読みやリハーサルに多くの時間をかける深田監督。『恋愛裁判』でもその方針は同じ。齊藤京子は、本読みやリハーサルを通して芝居をつくりあげていく過程が、初めての映画主演という大役を担ううえで、大きな糧になったと語る。

    深田監督の俳優への演出について、『本気のしるし』でも協働した阿部瑶子プロデューサーは、「何かを足していくよりも、よけいなものを引いていく作業に近い」と指摘する。リハーサルを始める際にいつも深田が俳優に伝えるのは、「自分が演じる相手との間にある距離を意識し、その距離感にあわせた声の出し方やお芝居をすること」。その基本方針を軸に、俳優たちの声が大きくなりすぎたり、動きに力が入りすぎたりすると、「もしこれが日常だったら、そこまで声を張らないのでは?」「ここはもう少し動きを少なくしてもいいかもしれない」などと指摘していく。細かな調整を経て、俳優たちと一緒に少しずつ芝居を完成させていく作業が入念に行われた。

  • 04.いつも以上に時間をかけた撮影前の準備

    今回の映画では、劇中でハッピー☆ファンファーレが披露するライブパフォーマンスも重要な要素となる。そのため、メンバー役を演じる俳優たちには、リハーサルとは別に歌とダンスのレッスンの時間が用意された。agehaspringsのプロデュースによる楽曲が出来上がると、それをもとに、振付家の竹中夏海が振り付けを手がける。メンバー役の俳優たちは、ボイストレーニングやダンスレッスンを受け、歌唱と振り付けを完成させていった。同時期に、間山敬役の倉も専門家の指導のもと大道芸の練習を重ねており、今回はこれまでの作品以上に、撮影前の準備にたっぷりと時間がかけられた。

    続いて、ハッピー☆ファンファーレのイメージとキャラクターをつくる衣装とメイクの準備。人気スタイリストの相澤樹に衣装デザインをオーダーし、フィッティングや調整を経て、それぞれのイメージに合った衣装が完成。同時にそれぞれのメンバーの髪型やメイクの方向性も決めていった。齊藤からは「全員が黒髪より、何人か髪を染めたキャラがいた方がグループとしては自然だと思う」という提案を受け、5人のうち真衣と美波と梨紗が髪を染めることが決定した。

  • 05.クランクイン

    長い時間をかけた準備が終わり、2024年10月11日、いよいよクランクイン。『恋愛裁判』は、真衣がさまざまな経験を通して変化していく過程を見つめる映画であり、そのためにも、演じる役と同じような時間を俳優たちに経験してほしいというのが、監督たちの思いだった。そこで撮影はなるべくストーリーに沿った順撮りになるよう計画された。そこで初めて撮る場面として用意されたのが、カラオケ店での場面。真衣と敬、梨紗とガールフレンド、そして菜々香とボーイフレンドという、主要なキャストが一堂に会し、交流を深めていくシーンだ。 撮影監督を務めたのは、『きみの鳥はうたえる』(2018)や『ドライブ・マイ・カー』(2021)を手がけた四宮秀俊。照明は、『あの子は貴族』(2021)や『海辺へ行く道』(2025)の後閑健太。ふたりとも深田作品への参加はこれが初めて。

    「ある意味、カット割りを決めるのが楽しくて映画をつくっているところがある」と語るように、深田にとってリハーサルや現場での段取りを通して動線やカット割りを決めていくのは、もっとも楽しく重要な作業だ。とはいえ、監督が事前に決めた画に周囲を従わせていくような強引さはもちろんない。自分の頭の中にあるイメージをもとにしながら、ときには俳優からの提案や、スタッフからの意見を柔軟に取り入れ、少しずつ現場で完成形をつくっていくのが深田監督のスタイルだ。

  • 06.リアリティを目指したライブシーン

    クランクインして4日目、撮影前半の山場となるハッピー☆ファンファーレのライブシーンの撮影。横浜近辺にある実際のライブハウスを借り、映画スタッフに加え、ライブハウスで働く音響技師、ライブステージの照明スタッフ、LED業者など、実際にライブの設営を専門に手がける人々が集合し、ステージのセッティングをしていった。

    そしてライブシーンをつくるために重要な存在となるのは、観客たち。憧れのアイドルを前に熱狂する観客の姿を描くには本物のファンの存在が不可欠だろうと、齊藤らメンバーを演じる俳優たちのファンクラブ会員に募集をかけ、エキストラと一緒にライブの観客として参加してもらうことが決まった。

    今回、演出部のサード助監督とフォース助監督として参加した二名が、偶然にも大のアイドルファンだったことにおおいに助けられたと深田は言う。グッズやライブの描写に細かいリアリティチェックを入れるとともに、撮影前には、演出部二名がハッピー☆ファンファーレのファンによるコールをつくり、レクチャー音声を用意。この音声をエキストラたちに共有し、撮影に臨んでもらうことに。

    撮影当日は、ハプニングにも見舞われた。ステージ上にLEDを設置したところ、想定よりも動けるスペースが狭くなってしまったのだ。これではメンバーが用意したダンスを披露するには難しい。そこで急遽美術部がホームセンターで大量の板を購入し、ステージを拡張。予定より撮影入りが遅れたものの、無事に安全なスペースを確保することができた。

    いざ撮影が始まると、メンバーたちはミスひとつなく完璧なパフォーマンスを披露。また、演出部が「演技をつける必要がない」と感嘆するほど、本物のファンたちが演じる観客はおおいに盛り上がり、リアルなライブ風景が映された。

  • 07.大道芸

    クランクインはカラオケ店の室内場面だったが、真衣や梨紗たちが「だるま朝日」について話をしたり、その後、真衣と敬がふたりきりで話をする屋上での場面は、初日とは別日に撮影された。真衣が「何か見たい」と芸の披露を頼んだあと、敬がふわりと宙に浮くという不思議なシーンは、衣装にグリーンの棒を入れてスタッフが上に持ち上げ、あとから棒とスタッフの姿を消すことで表現された。宙に浮かんだ後、敬が空中で足を動かしたり逆さになる描写は、スタジオでグリーンバックを背景にワイヤーを使って撮影されたもの。また、真衣が敬の大道芸をひとりで見に行き、帰りに車で送ってもらうシーンでは、スタジオに車を置き、スクリーンに車窓の風景を投影する「スクリーン・プロセス」を利用して撮影された。

    特撮技術を利用しながらも、敬の大道芸の場面は、基本的に倉悠貴本人が練習を積み実際に演じている。主にジャグリングとパントマイムを中心に練習した倉の上達ぶりはとても早く、指導にあたった専門家も驚くほどだった。

  • 08.裁判シーン

    前半場面の撮影がひととおり終わった後で、後半パートとなる裁判シーンの撮影が始まった。脚本の段階から、深田はこの映画は前半と後半とで大きくムードが変わるだろうと構想していた。スタッフやキャストの間にも、ここからは雰囲気の違うシーンを撮っていくんだという緊張感が漂う。「前半でアイドルとしての活動を楽しく演じたあと、突然まったく別の映画の撮影に入ったというくらい、世界観ががらりと変わったのを実感しました」(齊藤京子)。

    撮影は、大学の法学部にある模擬法廷(教室)を借り、二日に分けて行われた。さらに真衣が最後の決断をくだす、和解をめぐる協議場面もこの二日間を利用して撮影された。この協議場面は、場所の構造上、外から強い照明を当てるのが難しく、自然光を利用した撮影が必要とされた。幸いにも、当日の天気は晴れ。窓の外から強い日の光が入り、真衣たちの姿をしっかりと照らす。強い決意を胸に、自らの言葉で思いを伝える真衣の顔が美しい光のなかで画面に映された瞬間だった。

  • 09.大変だった撮影

    比較的順調に進んでいった撮影のなかで、大変だったのは、ハッピー☆ファンファーレのリリースイベントで、菜々香がファンの一人から襲撃される場面。大勢のエキストラを集め、スモークを焚き、逃げ惑う人々を映しながら、菜々香と真衣に迫ってくる加害者というアクションシーンを撮らなければいけない。入念な準備を固め、複雑なアクションを時間内に撮り切れるよう、全員が緊張感をもって臨んだ場面だった。

    夜にはまた別の撮影が待っている。ニュースで事件を知り心配してやってきた敬に気づいた真衣が、制止を振り切り、彼のいる車へと走っていくシーン。真っ暗な駐車場を走っていく真衣を、カメラが並走して捉える。シンプルだが、映画の前半と後半とを区切る重要な場面であり、照明やカメラのセッティングに入念な準備が必要とされる。夜遅くに撮影が終わると、誰もがほっと息をついた。

    後半場面で大変だったのは、ある夜、真衣と敬が土砂降りのなか自分たちのこれからについて激しく言い争う場面。深田監督がイメージしていたのは、小津安二郎監督の『浮草』(1959)。やはり土砂降りのなか、軒先にいる京マチ子と中村鴈治郎が道路を挟んで喧嘩をする名場面だ。リハーサルでは齊藤と倉が実際に撮影場所を訪れ、それぞれの動線や芝居を確認しながら、雨を降らせる範囲をスタッフで決めていく。他の場面以上に大掛かりな準備が必要とされた撮影で、俳優たちもずぶ濡れになりながらの演技だったが、見事に『浮草』のように迫力のある口論シーンが完成した。

  • 10.クランクアップ

    クランクアップは、真衣が梨紗と一緒に「だるま朝日」を見にいく場面。撮影場所は静岡の下田。海に昇る朝日を見ながら、真衣はどういう表情でこの物語を終わらせるのか。映画にとって大事な場面となるため、天気が崩れることも予期し、撮影には予備日を入れて二日間が用意された。残念ながら二日間とも太陽がうまく現れず、「だるま朝日」そのものは別日での追撮となったが、真衣と梨紗、ふたりの芝居は完璧なハーモニーを奏で、撮影は終了した。

    初めての主演映画であり、「初めて脚本を読んだとき、自分自身の人生が描かれているように感じた」と語るほど真衣という役に強い共感を抱いていた齊藤京子は、最後の芝居が終わると号泣し、周囲もその様子に強く心を動かされた。10月11日から始まり、11月24日に撮影終了。寒さが増してきた早朝、約1ヶ月半にわたる『恋愛裁判』の撮影が、すべて終了した。

Opinion Commentオピニオンコメント

  • 藍染カレン
    (俳優)

    アイドルってなんだろう。この映画を観てる間ずっと思っていました。その全てを見ろ、と言われた気持ちでした。こんなに歪で、危うく美しい"お仕事"を私はアイドルの他に知りません。アイドルってなんだろう。その輝きに、己に、問い続けるのだと思います。

  • 生駒里奈
    (俳優)

    私がアイドルになった時からずっと心にひっかかっていた矛盾。それを言葉にしてしまってはいけなかった、その矛盾を芸術とにごして来ていたんだと思う。アイドルが背負わされる十字架を作品にして下さったのが、救いでした。

  • 宇垣美里
    (フリーアナウンサー・俳優)

    人が人らしく生きていくって、どういうことなのか。
    「こうあるべき」に支配され、どんどん心がその色に染まっていったあの頃を勝手に重ね、流れる涙に溺れそうになった。
    それぞれの目線も思いも丁寧に描かれ、誰のことも断罪しない結末だからこそ、残された問いの答えをずっと考えている。

  • 内田也哉子
    (文筆家・無言館共同館主)

    まるでファンタジーのように、自分と掛け離れた世界の物語かと思いきや、気づけば、自分の中に渦巻く感情と真理の混沌にゾッとしていた。
    これぞまさに深田監督マジック!

  • 香月孝史
    (ライター)

    私たちがいつしか見慣れてしまった光景の異常さを、静かに浮かび上がらせる。主人公のいとなみがいとおしいほどに真っ当だからこそ、現実社会の歪みは一層鋭く照射される。問い続けることを、やめてはいけない。

  • 加藤るみ
    (タレント・映画コメンテーター)

    正真正銘、アイドルのリアルを描いた映画。
    夢を追うとは、これほどに美しくこれほどに残酷なのか。
    光と影の二面性、アイドルの在り方・ファンの在り方、その強烈な問いに心がズキズキと痛み、気づいたら涙が溢れていた。
    アイドルである人、アイドルを目指す人、アイドルを応援する人、全てに届けたい。

  • カラタチ 前田壮太
    (芸人)

    人を好きになる気持ちを他人に裁かれる筋合いはない。
    しかしアイドルは別である。「ファン」という「集合体」としか恋愛を許されてない彼女たちは特定の人を好きになることを憚られる。
    「人を好きにならないわけがない」それでもその感情が可視化された瞬間に魔法が解けたようにその子から気持ちが離れてしまう。アイドルってなんなんだろう?ファンってなんなんだろう?

  • 齊藤工
    (俳優)

    『恋愛裁判』は、恋愛のかたちを借りながら、日本社会の「なぜか当たり前になっている違和感」を証言台に立たせるような映画だった。
    制度やルール、そして“夢を追う者”が、ごく自然に負担を背負わされていくどこか歪な構造が、静かに、しかし鋭く浮かび上がってくる。
    その違和感を、きちんと“違和感のまま”返してくれる、今の日本でこそ観るべき一作。

  • ジャ・ジャンク―
    (映画監督)

    「愛する自由」を訴えるというテーマに強く惹かれた。
    アイドルやエンターテインメント産業に一石を投じる、感動の物語だ。

  • トレンディエンジェル たかし
    (芸人)

    この映画を観て、まず最初に思った事。
    それは"この映画、観なきゃ良かった"だ。
    アイドル好きの僕としては、アイドル側よりも、ファンの人に自分を重ねて感情移入してしまった。
    アイドルが命を掛けているのと同じ様に、ヲタクだって命を掛けて本気で推しているんだ。
    是非、この映画を観て欲しい。そう!隠れて恋愛している全アイドル諸君に。

  • 早川千絵
    (映画監督)

    自分はいったい何と闘っているのか。そんな主人公の声が終始聞こえてくるようだった。彼女にだけ見えている景色があることを、その静かで強いまなざしが語っていた。

  • 本間かなみ
    (テレビ東京ドラマプロデューサー)

    生きている。
    それを、これほど豊かに雄弁に語るアイドル映画、初めてだった。
    自分をコンテンツ化することの矛盾と魔力の中で息づくシスターフッドが最高に愛おしい!
    おいしいご飯をお腹いっぱい食べれますように。

  • 松井玲奈
    (俳優・作家)

    夢の始まりはどこだったのか。
    誰のために、何のためにその道を選んだのか。
    自分はどこへ向かいたいのか。
    アイドルはみんなの“もの”として輝き続ける存在。
    でもその内側には、ひとりの“人間”としての鼓動が確かにあることに気づかされる。

  • 峯岸みなみ
    (タレント)

    あのとき語った決意も感謝も、誰にも言えなかった胸の高鳴りも、全部全部嘘じゃないから苦しいんだ。
    走ったり、歩いたり、止まったり、また進んだり...
    ハッピーエンドの形はひとつじゃないから、全てのアイドル、
    そしてファンの皆様が自分なりのハッピーエンドにたどり着けますように。
    ※鑑賞は自己責任でお願いします!

  • 森崎ウィン
    (俳優・アーティスト)

    なんて面白いんだ。
    今もなお時代の先頭を走るアイドル文化。そこにこの映画。
    深田晃司監督、あなたの世の中を見る視点が、なぜこんなにも天才的に面白いのでしょうか。
    ワンカットワンカットに溢れるアイドルの人間模様。
    すごくワクワクしました。

  • 和田彩花
    (詩と言葉のアーティスト)

    仲間、グループ、ファン、恋人への想いとともに、恋愛禁止という暗黙のルールへの違和感がゆったりと折り重なっていく。アイドルを愛し、大切に丁寧に想うってきっとこういうこと。

Special Talk特別対談

津田健次郎×深田晃司監督
特別対談

※一部本編のストーリーに関わる内容が含まれています。
本作未鑑賞の方はご注意ください。

津田さんはオーディションで『恋愛裁判』に出ることになったそうですね。どのようなところに惹かれてオーディションを受けようと思われたんですか?

津田 もちろん深田監督の新作だというだけでも興味がありました。題材としても、深田監督がアイドルというテーマを撮るという意外性も含めて興味があったので参加させてもらいました。自分が演じる役が事務所の社長の役だということはわかった上でオーディションを受けました。

深田 自分ができるだけオーディションで俳優と出会うことにこだわっているのは、業界にもっとオーディションが増えるといいなと思っているところはあるんですけど、ミスキャストを減らしたいということもあるんです。キャスティングを検討する段階でまずは過去作を見たりはするんですけど、過去作は過去作でしかなくて、脚本や監督が変わると演技も変わってきます。役にハマらないとお互いに損をしてしまう結果になるので、キャリアのある方でも、もしよければ脚本を読んで頂き、まずは台詞を聞かせて頂ければと思いました。

実際にオーディションをしてみていかがですか?

深田 やっぱり声がすごくいいなと思いました。津田さんが演じる吉田という役は、主人公のアイドル真衣が所属している事務所の社長で、その社長としての“圧”をどこまで描くかの匙加減が難しいんです。描きたいのは事務所が悪いんだということよりも、業界の構造の問題。でも社長の圧が少なすぎると物語に説得力がなくなってしまう。津田さんの声に艶と凄みがあったので、この声ならば事務所の持っているプレッシャーが表現できるかもしれないと思いました。吉田社長のちょっと軽みのある部分、ひょうひょうとした部分も、オーディションでお芝居してもらいました。ふたつくらいのシーンを読んで頂いて、とてもいいなと感じました。吉田というキャラクターは動き回らないので、動きというよりは、セリフを聞かせてもらうと言う感じで座って読んでもらったはずです。

現場ではどんな話をされましたか?

深田 なかなかバタバタしていて話す時間が取れなかったんですね。でも、津田さんの初日の撮影の合間に時間があって、お互いにこれまでどんな仕事をしてきたかとか、演技についてお話しすることができした。僕の中での津田さんは、アニメの声優として素晴らしいお仕事を残されていたイメージもあったんですが、津田さん自身は、実写の仕事で、しかもリアリズム寄りのお芝居に挑戦したかったんだという話をされていたので、やっぱり出てもらってよかったなと思いましたし、同じ方向を見てる人なんだなと感じました。

津田 完成した映画を見させていただいたのですが、作品を通してすごく抑制の効いた演技になっていたと思いました。要は記号的な演技ではないので、観客がこの人は何を考えているんだろうと想像できる。そういう演技をさせていただけることって、余白があっていいなと思いました。

そう考えると、これまでとは違った演技をするチャンスがあるという意味でも、オーディションって良いところがあるのかもしれないですね。

深田 確かに、フィルモグラフィを見ただけだと過去の役でイメージが固まってしまうので、オーディションで話してみることで、どういう芝居の方向性が好きなのかを知れていいですよね。オーディションでなかったら、そういう出会いにたどり着くのって難しかったかもしれない。声優の世界はオーディションが当たり前と聞きますけど、実写の世界もそれを見習うべきだと思いますね。

津田 オーディションシステムに関しては、深田監督に頑張って広めていただきたいですね。

深田 僕もできれば芸能事務所も巻き込んでオーディションに関しては議論してみたいんです。オーディションが少ないと、新人の若い俳優にもなかなかチャンスがないですし、キャリアを積んだ俳優も、自分で役を選んだり新しい挑戦がしづらくなっていくから、受け身になってしまう。人気者になればなるほど役を待つしかなくなってしまいます。『恋愛裁判』の扱う主体性の問題は、アイドル業界だけでなく、いろんな業界でも共通する部分があると思っているんです。例えば俳優の世界でも、事務所との関係性の中でどこまで自由が許されているんだろう、じゃあ、俳優の主体性ってなんだろうという話になるので、実は『恋愛裁判』の話はいろんな業界に繋がることだと思います。

津田 恋愛にまつわる裁判というとキャッチーではあるんですけど、そこはいろんな業界とか、日本や世界にも通じる何かっていうものはあると感じますよね。

その上で、撮影に入るまでの役作りはどうしていましたか?

津田 イメージは持っていきますし、全体における役割、シーンにおける役割、いろんなことは準備していきましたけど、やっぱり現場が命だとも思いました。もしイメージと違ったら、深田監督がこうしましょうと言ってくれると思っていたので、わりとフラットに入った感じです。

何か監督から言われたことはありましたか?

津田 首が揺れるのを止めましょうというのはありましたね。

深田 それは自分の演出の定番ですね。いろんな俳優さんによくお願いしてることが3つあって。ひとつは、首の揺れ。セリフを言おうとする俳優さんは首で台詞のリズムとりがちなので。それと、ジェスチャー。演技をしようと身体が準備してしまっていて、いつもよりジェスチャーが増えてしまう。特に指差しは多いので、それを抑えて頂くことはよくあります。また、長台詞の前で息継ぎをしてしまうこと。台本を読んでいる俳優は、次に長い台詞が来ることを知ってしまっているから、つい息を吸って準備してしまうんですけど、普段は自分の次の言葉が長いかどうかなんてそんな意識しながら話さないですよね。初めて一緒に仕事をする方とは、最初の本番のワンカットを撮るまで、楽しみでもありドキドキもあるんです。でも津田さんの場合、撮り始めてみたらすっとハマってくださって。しかも、僕は映画は集団の芸術だと思っているので、提案してくれるタイプの役者さんが好きなんです。今回の津田さんも、例えば演技の途中で眼鏡をはずすという芝居を提案をしてくださって。眼鏡をはずすことで、ある問題を起こしたアイドルの菜々香に対して、無意識的な“操作”をしているようなところが出ていてよかったですね。

監督は津田さんと撮影してみて何か気付かれたことは?

深田 予想外だったところは、本当に津田さんは現場がお好きだということです。撮影は照明や機材のセッティングで待ち時間が長いんですけど、津田さんは控室よりも現場にいることが多くて、よく様子を見られてましたね。そのときに喋ったことで印象に残っているのは、劇中のアイドル、菜々香が問題を起こして、説教する場面ですごく静けさがあったんですけど、静けさが菜々香にとってのプレッシャーになると津田さんは考えられていて、あくまでも静かな空間で、静けさを壊さないまま、淡々と説き伏せていくという演技をされていたことです。事務所の社長が強引に説得するのではなく、アイドル自身が自分で選択して恋愛を放棄したように誘導する、それが大人の狡さなんですけど、淡々と静かにその力関係が成立していたので、あのシーンはよかったなって思いました。

津田 圧をかけるのにもいろいろあると思うんです。怒鳴ったり暴力的なものと、静かに追い込んでいくというものとか……。追い込まない圧って、大人の狡さがすごく溢れていて、「自分で選んだんだよね?全てはあなたの選択だし、僕らはサポートしてるんだよ」というロジックが見えてより怖いなと思ったので、そう演じました。すごく複雑で二元論ではないんですよね。しかも、吉田はその後、事務所が大きな会社に吸収されて雇われ社長になる。そういうところもすごく複雑ですし、何が強者で何が弱者かわからない。そういうところもすごく面白い映画になっていると思います。

深田 吉田が菜々香を追い詰めるシーンは撮影が始まって二日目か三日目で、しかも津田さんは初日だったんです。でも、このシーンを見たことで、スタッフ一同、この映画はいけるって思ったと思います。それくらいあのシーンは重要だったんです。そういえば、『恋愛裁判』は全体的に夜のシーンが多くて。脚本を書き始めてから気づいたんですが、アイドルはお忍びで恋人と会わざるをえない以上、当然、夜のシーンが多くなってしまうんですよね。

津田 朝日が昇る映画でもあるので、そこにたどり着くまでは夜が支配してないといけないんですよね。そうでないと、朝日の感動が生まれないので。だから、昼間のシーンであっても夜の印象があるかもしれないですね、裁判シーンも夜ではないけれど……。

深田 あそこは日が差さないですからね。個人的に、裁判のシーンの津田さんがすごい好きなんです。津田さんは、前半で声の圧力を十分発揮してくださったんですけど、後半の裁判のシーンでは、逆に一切しゃべらずにただ座っているだけでプレッシャーを与えているんです。唐田えりかさん演じるマネージャーの矢吹早耶が話すときにも常に吉田は横に居て、微動だにしないんだけれど、なにかしら、早耶は吉田の圧を感じながら喋っているという感覚が滲み出ていて、凄みがあってよかったですね。

社長とマネージャーというふたりの関係性や背景があんまり明らかにされてないんですけど、それが少し分かるシーンがあって、そこでまた深まるんですよね。

津田 かつて早耶が何をしていたのかがわかるシーンがあるんですけど、それを知ったことで、「この子はいったいどういう思いでマネージャーをしたんだろう」っていう想像が広がるんですよね。奥深い脚本だと思いましたし、すごくリアルでした。

社長の背景やキャラクターは、何か深田さんと津田さんの間で共有されていたことはあるんですか?

深田 そこまで吉田の背景については津田さんに説明していないんですけど、今回書いた小説の方に、どんな経緯で社長になったのかは書いています。

津田 設定は聞いてはいないんですけど、吉田には、どこか軽さがあるんですよね。それを監督は“ひょうひょうとしてる”と表現していましたが、その軽さがすごく罪だったりします。所属アイドルのことも、心配してるようでしていない。「怪我は大丈夫?」というべきところを「怪我ないよね?」と決めつけて言うんですよね。実はああいうところに人は傷ついていくんじゃないかなと思いました。

深田 あるトラブルの起こった後に吉田が遅れてやってくるシーンなんですけど、そのときの吉田の態度がすごくうまいんですよね。本能的にトラブルを小さく見せようとするという責任者としての狡猾な態度が見えて。アイドルにどれだけのことを負わせているか、ファンとアイドルのことについてもそこまで把握していないこととか、いろんなすれ違いが出る場面での津田さんの匙加減がよかったですね。

現場でアイドルはファンの顔を見ているけれど、社長はぜんぜん見ていないというところも興味深かったですね。

津田 確かに立ち位置的にもそうなんですよね。アイドルを好きな方がこれを見てどう思われるか興味がありますね。どこかアイドルという文化や構造に対して、「大丈夫ですか?」という疑問も提示されていますし。一方で、アイドルを支えているスタッフさんや、応援する方々への、優しい目線も感じられて、面白い構造だなと思います。

深田 東京国際映画祭ではアイドルファンの方も見てくださって、今のところ拒絶反応もなくて、むしろ「誰かを推している人は見るべきだ」という意見も出てきていて、それはこちらとしては嬉しい反応です。考えるきっかけとなる作品だと受け止めてもらっているみたいで。

アイドルが人に夢を与えるために、期待に応えないといけないけれど、それがアイドルを縛るものになってはいけないということも描かれていますね。それは人権にもつながるもので。

深田 人権というと大上段に聞こえてしまうかもしれないんですが。今回の作品は、10年前に、アイドルが恋愛をして裁判を起こされ、その根拠が契約書にあったという実際に起こった出来事が発端で、それに対して違和感を持ったことが出発点になっています。だから、当然、人権という視点はあるんです。でも、映画が自分の思想をおしつけるものになってはいけないとも思っているので、それをどう受け取るかは、観客に委ねているつもりです。この作品をみることで、その人の恋愛感やアイドル感が、炙り出される鏡みたいになるといいなと思っています。真衣の選択を肯定的にみる人も、そうでない人もいるだろうし、いろいろだと思います。真衣がこの映画の主人公だけど、彼女の周りのアイドルたちの生き方も提示しているので、どこに共感するかは人によって違うだろうなという作りにしています。

津田 非常に多面的な映画ですよね。共感できるできないで見ることもできるし、人権という観点で見ることもできる。ほかにも、ビジネスの視点でも見ることができます。吉田の視点だと、社長として彼女たちに投資をしているんですね。その投資が、メンバーの暴走によって壊れていくのはビジネスとしてはありえないと思う人もいるわけで。非常に複雑だけど、テーマとして、とても興味深いですね。

深田 本当に難しいですよね。恋愛をするのもしないのも本当に個人の自由だと思うんですね。要は、その選択にどれだけの主体性があるのかということ。吉田が本人に選ばせてるようでいて誘導している場面を見ればわかるように、本当に事務所がアイドルの主体性に過度に関与していないのか。あるいは「やっぱり恋愛してほしくない」というファンダムの思いもまた、アイドルの主体性に影響を与えているはずで。だったら、「アイドルなんだから恋愛しなければいい。恋愛したければやめればいい」という話になると、それもまた難しい議論で、そもそも人権侵害を前提としないと成り立たない職業になってしまう。結局、映画業界だって同様の問題を抱えていて、だから今、働き方を改善しようとしているわけですけど、それでは以前のようには映画を作れないといって反発をしてしまうと、じゃあ徹夜での作業やセクハラやパワハラのような人権侵害を認めてしまうのかと。それって「人権を侵害しなければ、この業界は成り立ちません」と宣言するようなものなので。業界の自殺に等しいと思っています。今、私たちのいる環境を当たり前だと思っていても、一歩引いてみると当たり前じゃないことは多くあります。自分たちの固定化した考えで捉えてきた恋愛について、アイドルについてを、この映画が、ちょっと立ち止まって考える機会になればいいなと思っています。

interview & text:西森路代

Commentsコメント

深田晃司監督コメント(カンヌ国際映画祭出品に際して)

構想から気づけば10年もかかってしまったこの映画を、最高のかたちでお披露目できることを嬉しく思います。ひとつ言えることは、主演の齊藤京子さんとの出会いがなければこの映画は完成しなかったということです。絵空事でしかなかった脚本に全身全霊で血肉を与えてくれた齊藤さんに心から敬服しています。また、長年に亘りこの企画を信じて導いてくれたプロデューサー陣、現場を支えてくれた最高のスタッフ、キャストには感謝しかありません。ぜひ多くの人にこの映画を楽しんで欲しいです。

齊藤京子コメント山岡真衣(やまおか まい)役(カンヌ国際映画祭出品に際して)

映画「恋愛裁判」が第78回カンヌ国際映画祭カンヌ・プレミア部門に出品されると聞いたときは、本当に夢のようで言葉にできないほど嬉しかったです。
深田監督、スタッフキャストの皆さん、この度は本当におめでとうございます。
この映画をたくさんの国の方々に観ていただけることが楽しみです。
深田監督とご一緒させていただけたことを、心から光栄に思います。

倉悠貴コメント間山敬(まやま けい)役

この作品のオーディションを受ける際、まるで運命のようなものを感じました。
先日、完成した作品を拝見し、自信を持って素晴らしい映画だと確信しています。

現代社会において、この作品を届けることができる意義を深く感じ、全力で取り組ませていただきました。

真衣と敬の恋愛がどのように展開していくのか、その行く末をぜひ見届けてください。

唐田えりかコメント矢吹早耶(やぶき さや)役

大念願の深田晃司組でした。
深田監督とお仕事をすることが、二十歳から私の目標のひとつであり、言葉にしつづけてきました。
オーディションに受かったと聞いたときの喜びは今でも忘れられません。
先日完成した本作を見て、映画があることの意味を改めて感じました。
人生は選択の連続であり、様々な人生の可能性があること、どんな可能性にでもなり得るということ、忘れずにいたいです。
深田組の皆さん、カンヌ国際映画祭出品おめでとうございます。
この挑戦的な意欲作を是非見届けてほしいです。

津田健次郎コメント吉田光一(よしだ こういち)役

世界を舞台に活躍されている深田監督の作品に出演させて頂ける事をとても嬉しく思います。しかも今回はアイドルを題材にした映画です。勿論脚本は読んでいますし、撮影も終わっているのですが、あの深田監督がどんな風にアイドルを描いたのか興味が尽きません。アイドルを描く先に広がる深田ワールド、劇場で観られるのが本当に楽しみです。皆様も楽しみに待っていて下さい。

実際の裁判から生まれた「心」を縛るルールに迫る問題作

1.23FRI

彼女の選択が今、裁かれる―